ミラノ万博特集 (1) 大人気の日本館

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日本館はトップランクの「行列のできるパビリオン」
JFコンソーシアムの日本食フードコートも連日の人気


「地球に食料を、生命にエネルギーを」という「食」をテーマにしたイタリアのミラノ万博(国際博覧会)――2015年5月にスタートしてから3か月以上がたち、これから10月末の閉幕まで、いよいよ後半期間に入る。
そこで、今回から5回にわたって、ミラノ万博の最大テーマの「食」の抱える課題を各国はアピールできたか、また見どころポイントや話題になったところは何かなどをレポート形式にして「ミラノ万博特集」をお届けする。

まず、第1回は、「行列のできるパビリオン」として、地元イタリア館と並んでトップランクの人気度を誇った日本館を取り上げよう。

日本食文化アピールの絶好のチャンスと、日本フードサービス協会(JF)会員企業7社は日本政府の協力要請に応じ、JFコンソーシアムをつくって参加、また特定非営利活動法人日本食レストラン海外普及推進機構(JRO)もJFコンソーシアムの日本食レストラン事業を積極サポートする形で協力している。

イタリアのイベント情報誌調査で日本館は「見ごたえある」と第1位評価


イタリアのイベント情報誌「ViviMilano」が現地ミラノを中心にして、6月末時点で行った人気パビリオンWeb投票結果によると、「一番きれい、すばらしい、見ごたえがある」パビリオンはどこかという質問では、第1位が日本で14%、第2位は地元のイタリア13%、そして第3位が次期万博開催国の中央アジアのカザフスタン9%だった。

現地の日本館広報担当者の話では、7月初め時点で入場者数が55万人を超したそうで、万博会場内での日本館人気は高かった。午前10時から午後9時までの開館時間のうち、時間帯にもよるが、ほぼ連日、1時間待ちが常態化していて、文字どおり「行列のできるパビリオン」となった。

ここで、日本館の人気ぶりを表すちょっとしたハプニングがあった。実は、ミラノ万博主催当局のミラノ万博公社が、入場参加者動員対策のためなのか、午後7時からの入場者に限って割安価格で特別入場券を発行した。これが地元イタリアの万博人気に弾みをつけ、午後7時以降の入場者が急増した。その入場客が人気パビリオンの1つ、日本館に集中したため、行列が一気に膨れ上がる異常事態となってしまった。

日本館関係者にとっては、うれしい悲鳴なのだが、日本館の開館は午後9時までのため、これら夜間の特別入場者をすべて収容するのが時間的に難しく、午後8時過ぎの段階で、「きょうの入場者はここまでで打ち切りです」と行列の途中の人たちをラインカットせざるを得なかった。もちろん不満が出た。
日本館の小林浩人館長は、「私たちとしても、せっかく日本館を見たいと並んでくださる人たちの入場制限するのは心苦しいのです。でも、ミラノ万博公社が各国政府館に対して、通達のような形で『各国館とも、出展は午後9時までに限ること』としたため、日本館だけが例外行動をとれなかったのです」と、現場で語っている。

日本館は「HARMONY」など農と食にからむ5つのSCENEをアピール


さて、日本館人気の秘密はどこにあるのだろうか。日本館は、「人と自然がともに生きる相生(あいおい)の世界」というテーマで、映像スクリーンを使って、日本の四季をめぐる「雨の一生」を物語ふうに書画や彫刻で映し出すプロローグの展示シーンから始まって、「HARMONY」、「DIVERSITY」、「INNOVATION」、「LIVE PERFORMANCE THEATER」など5つのSCENEを順番に見て回る構成だ。

日本館を見学した複数のイタリア人ら外国人客の話を総合すると、人気のあったSCENEは、「自然と寄り添い、多様な恵みを育む日本の食の産地」というテーマのSCENE1、そしてSCENE2の「日本の食と農、食文化の多様性、さらなる拡がり」というテーマの「DIVERSITY」、最後のSCENE5での「日本食は世界をつなぐ『地球食』」というテーマで入場者の観客をショーに参加させ臨場感を持たせる巧みな演出だったようだ。

SCENE5は円形劇場スタイルで「未来の地球食」を楽しく演出し好評価


とくにSCENE5では、エンターテインメント性を全面に押し出して、ショースタイルでテーマの「未来の地球食」をアピールした。具体的には、スペースを広くとった円形劇場スタイルにした真ん中のステージで、男女2人のスタッフがさまざまなパフォーマンスで日本の四季の日本食を大型映像空間に浮かび上がらせる。入場者は真ん中のステージを囲むような形でレストランのダイニングテーブルふうの客席に座る。そして、入場者の前のテーブル上の画面にも日本食を映し出し、手元のお箸を使って、それぞれ好みの食事を選ばせる。しかも「いただきます」「ごちそうさま」という言葉を入場者に口に出してもらうことで、コミュニケーションの輪も広げる一体感のある演出だ。

日本から訪れた観光客ら日本人の間でも、この演出たっぷりの「未来の地球食」の軸が日本食にあったことに大満足で、「なかなかアイディア豊富で、わかりやすく面白かった」と好評価だった。地元のイタリア人を含めた外国人の入場者も、エンターテインメント性のあるショースタイルの演出が気に入ったようで、SCENE5が終了した時点で盛んに拍手をしていた。この拍手の大きさで、満足度が十分に伝わってくる感じだった。

7月11日の「ジャパンデー」イベントは日本の存在感を示して大好評


ミラノ万博前半期間の最後を飾る日本館のイベントといっていいのが、7月11日の「ジャパンデー」のプロジェクトだった。
各国が、それぞれ自国をアピールするため、ミラノ万博会場の一部を借り切って、公式の祭典として、さまざまなイベントを繰り広げるものだ。この日は、まずエキスポセンターで日本とイタリアの両政府の代表団が参加して幕を開けた。イタリアのマウリツィオ・マルティーナ農林政策大臣が歓迎のあいさつ、続いて日本の林芳正農林水産大臣があいさつに立ち「多くの方々が日本館を訪問していただくことで、日本の食文化が世界にさらに広まっていくことを願う」とあいさつした。

日本の存在感をアピールしたのは、ミラノ万博会場の目抜き通りともいえるデクマーノ(大通り)をパレードした東北復興祭りだ。4年前に世界中を震撼させた東日本大震災・大津波から見事に復興に向けて立ち上がっている東北の福島、宮城、岩手3県を中心に東北の10大祭りが勢ぞろいし、パレードで「ジャパンデー」を盛り上げた。青森県の「ねぶた祭り」、秋田県の「竿灯まつり」はそれ自体がスケール大きく、インパクトがあるため、会場に集まったイタリア人を含む外国人には強い感動を与え、大好評だった。

一方、このジャパンデーには日本から、ミラノ万博日本館プロジェクトを資金支援などの形でサポートしている企業関係者ら400人という大勢が本イベント参加した。
日本館関係者は遠路はるばる日本から来ていただいたサポーター企業などに日本館をいち早く見ていただこうと、一般の入場客の前に優先入場の形で日本館に誘導したため、一般入場客の人たちに炎天下で待機してもらうといったちょっとした手違いも起きた。
上海万博の時には、優先入場してもらうゲストら特別客の出入り口と一般客の出入り口を別々にしていたため、トラブルにはならなかったが、今回のミラノ万博では、その点の確認がやや不十分であったことから、日本は「おもてなし」「HOSPITALITY」を強くアピールしている館だけに、残りの期間関係者一丸となって運営面での改善を行う事が必要だ。

日本食フードコートは日本館人気に連動、外国人客で賑わう


最後に、日本食文化をアピールする日本食フードコートのこともお伝えしよう。
日本館のフードコート・レストランは、日本フードサービス協会(JF)が日本政府の協力要請に応じ、会員企業の壱番屋、柿安本店、サガミチェーン、人形町今半、美濃吉、モスフードサービス、吉野家ホールディングス(京樽)の7社により、JFコンソーシアムを結成して運営している。
また、特定非営利活動法人日本食レストラン海外普及推進機構(JRO)もJFコンソーシアムの日本食レストラン事業を積極的にサポートしている。日本食フードコート・レストランは、日本館に併設される形でつくられ、さまざまな日本食を振る舞われており、日本館の人気と連動して、外国の方を中心に、連日多くのお客様で賑わっている。

なお、日本館のフードコート・レストランの状況に関しては、今後の特集で詳細にレポートしたい。

寄稿者:牧野 義司 氏(経済ジャーナリスト、メディアオフィス「時代刺激人」代表)