八戸市でユニークな世界黒にんにくサミット初開催

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農業法人やジェトロ共催、中国・タイ・ルクセンブルグなどが参加


 世界主要国の料理シェフの間で食材評価が高まり今や米国、EU(欧州共同体)、アジアの24か国に輸出されている青森県産の黒にんにくを、さらに内外にアピールしようという「世界黒にんにくサミット」が2016年9月6日に青森県八戸市で初めて開催された。

 個別の農産加工品の輸出促進と存在アピールを兼ねた国際イベントというのは、あまり前例のないものだったうえ、黒にんにくという珍しさと話題性もあって、地元メディアのみならず数多くのメディアが当日、大きく報道したほど。

 黒にんにくは、にんにくを長時間、高温熟成して食品加工したもので、もともとは、弘前大学の医学教授だった佐々木甚一教授(当時)の研究成果がベースにあるが、農業生産法人柏崎青果の柏崎進一社長ら生産者、食品加工企業などの積極的に商品化に踏み切った熱意、工夫改善による。このため今回のサミット開催は、柿崎さんが理事長を務める農業生産者や食品加工企業などが加盟する協同組合青森県黒にんにく協会の主催で行われた。

 協会が主導して、サミット開催を呼びかけたところ、ジェトロ(日本貿易振興機構)と青森県中小企業団体中央会がまず共催の名乗りをあげたほか、農林水産省や経済産業省・特許庁、青森県、日本フードサービス協会(JF)などが後援するという異例の大掛かりなバックアップ体制が組まれた。

開催日9月6日は「黒(9と6)にんにく」で設定、今後、毎年同じ日に開催


 開催日の9月6日は、黒にんにくの「黒(9と6)」にからめて設定.された。今後、この日を「黒にんにくの日」とし「世界黒にんにくサミット」も継続的に開催していくという。

 当日は、日本国内のにんにく生産者、加工企業関係者、輸出企業などのほか中国、韓国、タイなどの輸出先の国々の関係者も参加した。また、2015年12月の安倍首相のルクセンブルグ訪問時に、首脳会談後の晩餐会でシェフを務めたレナート・ファヴァロ氏が黒にんにくで首相をもてなし高評価を得たこともあり、今回、特別招請ゲストとして参加した。全体としては約420人が参加した。

 大会の冒頭、柏崎協同組合青森県黒にんにく協会理事長が主催者を代表して開会宣言を兼ねてあいさつした。世界に向けたサミットということで、柏崎理事長は英語で書かれたあいさつ文を読み上げ、その中で、日本国内で生産シェア70%を誇る地域特産物となっている青森県産にんにくをベースにした黒にんにくは今や世界中に広がっていること、今回、世界黒にんにくサミットの開催によって、世界に向けて日本で生まれた黒にんにくが健康にもいいことをアピールし歴史をつくっていこう、と述べた。

ゲストのレナートさん「黒にんにくに一目ぼれ、日本料理は世界3大料理」


 来賓のあいさつのあと、ゲストとして招請されたレナート・ファヴァロさんが登壇し「私と黒にんにくとの出逢い」と題するスピーチを行った。レナートさんは、ルクセンブルグのリストランテ・ファヴァロのオーナーシェフだが、スピーチでは「私は仕事柄、世界のいろいろな食材、とりわけ素晴らしい味の食材を探し求めているが、数年前、パリの市場で黒にんにくを見つけて、一目ぼれといっていいものだった。にんにく自体に関しても、これまで日本の青森産のもの、他の国々のものと比べても青森産はユニークで、優れている。そのにんにくを熟成加工した黒にんにくは、食材としても素晴らしいもので、日本が誇りにしていいものだ」と述べた。

 そのあとレナートさんは、日本の安倍首相が昨年12月、ルクセンブルグを訪問された際、自身が晩餐会をすべて仕切ることになり、その時に黒にんにくの活用を考えたこと、帰国後のインタビューで黒にんにくなどを使った料理の評価をいただいたことを聞きうれしかったことなどを語り「日本のみなさんは黒にんにくが健康にいい、という形で活用されているようだが、私は、味を引き立たせるために、黒にんにくを使っている。私の見るところ、こうした豊富な食材を活用する日本料理は、フランス料理、イタリア料理と並んで世界の3大料理だと言っていい、と思っている」と締めくくった。

黒にんにく生みの親、佐々木さんが開発成果を熱心に講演


 続いて、サミットのメインテーマの1つとして、黒にんにくの生みの親ともいえる佐々木甚一さんが基調講演を行った。佐々木さんは、開発時の弘前大学から現在、弘前医療福祉大学短期大学部救急救命学科教授に転出されているが、講演では2005年に、にんにくを長時間、高温熟成させた黒にんにくには高い機能性があることがわかり、健康に極めて効果のある機能性食品として開発すれば、大きな広がりを持つ食材になる、とアピールすることにしたなど、熱弁をふるった。

 また、地方独立行政法人、青森県産業技術センター農産物加工研究所の研究開発部長の能登谷典之さんが研究成果を踏まえ、黒にんにくの成分規格化の必要性をアピールした。

 このあとサミットは、東北地方で著名な伊藤勝康さん、狩野美喜雄さん、渡邊隆さんの3人のシェフが「東北の食材と持続可能な地域づくり」というテーマでトークショーを行った。この中で、渡邊さんが「東京に日本全国の食材が集中して、素晴らしい料理が出来ているように、一般的には見られているが、最近、東京の人たちが地方に観光旅行しながら、おいしい食材を地方に求めつつある現実がある」と述べたら、伊藤さんが「在来野菜のよさをアピールする山形の有名シェフがその話にからめて、面白い話をしていた。食材の横綱は地方に残して、東京からわざわざその食材を味わいたいと来させることが大事だ。逆に、東京には農業生産地からは大関ランク以下の食材を送ればいい。そうやって、優れた食材を東京などから食べに来させることで地方再生が可能になる、という。実に面白い発想だと思った」といった形で、会場の笑いを誘った。

交流会で黒にんにく素材にした料理を披露、試食した人たちも評価


 大会は、最後に、冒頭の柏崎協同組合青森県黒にんにく協会理事長が「世界黒にんにくサミット」宣言を読み上げ、満場一致で採択された。これを受けて、来年9月6日に第2回のサミット開催を決めた。

 終了後の交流会では特別ゲストのレナートさん、それに東北の著名シェフ3人による黒にんにく料理が披露された。中でも、レナートさんはオマールエビのラビオリ、それにイカの冷温2種の料理を披露したが、このうちオマールエビのラビオリは黒にんにくでアクセントをつけたソースで、試食した人たちの評価は極めて高かった。

(レポーター 牧野義司)