平成27年度JRO総会報告

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平成27年度総会で海外シンポジウムなど新事業計画も承認


特定非営利活動法人日本食レストラン海外普及推進機構(JRO)は6月18日、東京都港区の笹川記念会館で平成27年度(2015年度)の総会を開催した。総会では、平成26年度(2014年度)の事業報告、収支決算を異議なく了承すると同時に、平成27年度の新事業計画およびそれに関連する収支予算を賛成多数で承認した。

今回総会の最大のテーマは、JRO発足当初から4期8年間、理事長として貢献度が極めて高かった茂木友三郎氏(キッコーマン株式会社名誉会長)が退任されることになり、その後任の役員人事を決めることにあった。総会では、新たに会長制を敷き、その初代会長に島村宣伸元農林水産大臣、また、新理事長として大河原毅氏(株式会社ジェーシー・コムサ代表取締役CEO)を選出、副理事長には安部修仁氏(株式会社吉野家ホールディングス会長)が再任された。

茂木氏は総会冒頭のあいさつで、「私は、4期8年間の理事長職を本日、退きますが、この8年間、多くの方々にご支援いただき厚く御礼を申し上げたい」と述べた。

島村新会長「責任重大さ痛感」、大河原新理事長「身の引き締まる思い」


新会長に満場一致で選出された島村氏は、総会あいさつで「このたび、食品業界を代表する我が国の宝のような存在の方々のみなさまのご推挙をいただき、会長に就任することになりましたが、責任の重大さを痛感しているところです」と謝辞を述べた。

そのあと、島村新会長は「JRO創立以来、実業界の代表者である茂木前理事長を先頭に、みなさまの英知と心を1つにして、今日まで、優れた我が国の農畜産物の輸出と食文化を海外に知らしめるべく、それぞれのお立場で努力したいただいたことにより、その成果は年々着実に積みあがって、新たな大きな飛躍が予測できるまでに成長してきています。みなさまが築かれた勢いを、さらに大きく前進させて、日本国民にさらなる自信を取り戻すことに最善の努力をすることをお誓い申し上げます」と抱負を述べた。

また、新理事長に選出された大河原氏は、総会後の懇親会でのあいさつで「私自身にとって身の引き締まる思いですが、学生時代から尊敬する経営者の茂木前理事長がここまでJROを育てられた基盤にのっとり、農水大臣を2期にわたって務められた島村会長、それに安部副理事長のご指導に従って、新理事長職にまい進して参りますので、ぜひよろしくお願いします」と述べた。

その際、大河原氏はJROの今後の活動に関して「日本食が海外で持て囃される中で、これは本当に日本食なのか、本当の寿司なのかと疑わしいものが海外にあることも事実です。これからは、本来の日本食材がしっかりと提供されることがますます重要で、その意味でも日本食レストラン海外普及推進機構のJROの活動もまた重要になると思っております」と述べた。

総会にはJRO会員の外食企業、食品メーカーはじめ関係業界団体の関係者ら約150人が参加した。

ミラノ万博を契機に日本食文化などを一段とアピール


総会では、加藤一隆専務理事から平成26年度の事業活動報告、また平成27年度の事業計画などが報告され、了承を得た。
このうち、焦点の新年度の事業計画に関して、加藤氏は「JROは、日本政府による農林水産物・食品の輸出額を2020年に1兆円とする目標の一翼を担うため、昨年度に引き続き、国内の生産者団体や食品製造業界、食品流通業界、厨房機器産業など、関連する産業と連携して、海外の日本食市場の拡大と獲得に向けた事業を展開する」と報告した。

また、5月1日から10月31日までイタリアで開催されている「2015年ミラノ国際博覧会(万博)」に関して、加藤氏は「日本食文化をアピールしている『日本館』は平均1日約6000人の来場者を数えるなど大きな反響を呼んでいる。今年度は、このミラノ万博の開催を含め、日本食および日本の食材・食品の国際化に向けた大きなチャンスであり、日本の食文化などを世界に一段とアピールする、またとない機会となることから、平成27年度はさまざまなスキームによって事業展開を実施する」と述べた。

組織・企画、海外市場開拓、情報・企画の3委員会も新事業計画を報告


総会では、組織・企画委員会、海外市場開拓委員会、情報・企画委員会の各委員長から新事業計画の報告があった。
このうち、組織・企画委員会は、海外支部ネットワークづくりを新年度も強化するとし、アジアにおいてはマニラ(フィリピン)、ヤンゴン(ミャンマー)、マレーシア、北米においてはシアトル(米国)、バンクーバー(カナダ)、ヨーロッパではマドリッド(スペイン)などにおける日本食レストラン関係者のネットワーク構築を検討する予定との説明があった。
また、海外日本食レストランの実際の店舗数や経営実体、さらに日本国内の外食企業の海外進出の実体がどの程度なのか実体把握が重要だとの判断から調査を行い、日本食分野における網羅的・定期的な統計データの整備拡充をめざす報告があった。

海外市場開拓委員会では、日本食市場のさらなる拡大をめざし、外食事業者を対象に日本国内の先進的な生産者や食品事業者などの出展による商談会や日本食フェアを開催、これによって海外外食事業者向けに農林水産物や加工食品などのマッチングを図ることが報告された。具体的には平成27年11月下旬に、台湾のフードサービス向けに台北市内でメニュー提案を、また平成28年3月ごろに北米地域のフードサービスに向けて発信力のある食品見本市にJAPAN UMAMIパビリオンを出展する計画が説明された。

急速に拡大するハラル食市場での日本食展開めざしシンポジウムも計画


また、平成28年1月下旬か2月中旬にマレーシアで、イスラム教の信者拡大を背景に急速に増えるハラル食市場での日本食展開をめざして「ハラル食市場における日本食、外食企業の取り組み方」などをテーマにしたシンポジウムも開催する計画。

さらに、ミラノ万博での日本食フードコートでの日本食文化アピールのための出店をきっかけに、新たな日本食材の流通網が構築されることから、海外市場開拓委員会では、イタリアをはじめEU(欧州共同体)地域のレストランに向けてメニュー提案会を平成27年8月から9月にかけてEU地域で開催する予定。

情報・企画委員会は、海外の調理師学校などと連携して日本食講座を開催して、日本料理の調理技術や食材・調味料などに関する講習機会の提供を行う。具体的には中国上海、台湾、タイのバンコク、フランスのパリ、米国のロサンゼルスで各国の調理師学校などとタイアップして日本食講座やセミナーを開催する。

また、国内外のメディアとの連携活動を通じて、日本食・日本食文化についての的確な情報を正確に海外に発信することが重要との判断から、JROのホームページなどを通じた日本食のさまざまな情報提供、マスコミを対象にしたセミナーなども活発に行う計画を示した。

寄稿者:牧野 義司 氏(経済ジャーナリスト、メディアオフィス「時代刺激人」代表)