6月21日、平成30年度の通常総会を東京都港区の笹川記念会館にて開催しました。
総会には会員企業をはじめ、外食企業、食品メーカー、関係業界団体、農林水産省などの行政機関から、約150名の方々にご出席いただきました。多数の方々にご出席いただき厚く御礼申し上げます。
平成30年度通常総会
開会挨拶 大河原 毅 理事長
「昨年度はアジア、欧州、北米におきまして、海外日本食レストラン及び日本食市場関係者のご協力を得て、日本食料理人の育成やシェフ・バイヤーを対象とした日本食研修等を実施しました。また、今年の2月では恒例となったアジア国際シンポジウムをフィリピン・マニラで開催。ASEANの中でもトップクラスの成長性を誇る有望市場においても日本料理が大変な人気を博している状況を目の当たりにし、現地外食チェーン経営者等の懇談では大変勉強になりました。一方で、訪日観光客は2800万人を超え、5年連続で過去最高を更新しております。海外日本食レストランは日本食の魅力を発信し、輸出促進のみならずインバウンドの拠点ともいえる状況です。JROは今年で設立12年目を迎えます。今年は現地の外食産業や食品産業、調理師学校等の教育期間と連携し、日本産食材の品質の高さ等を全面に押し出し、海外の日本食市場の持続的拡大に向けて事業を邁進して参る所存です。
先日、ロサンゼルスに赴いた際、何件かの日本食レストランを視察しました。中には三ツ星をとった日本食レストランもありましたが、召し上がっている方々のほとんどが現地の人と思われたことから、既に現地のお客様は本物とそうではない物を見極めて店舗を選んでいるという風に感じました。本物の日本食の味が浸透してきたということからも、私どもの過去の活動を点から線に、引いては面にするということがこれからの課題と思われます。そのためにはアジア・北米での拠点作りが大切と捉え、工夫を凝らして活動を進めていくなど、チャレンジングな1年にしたいと思います。今後も皆様方のご協力を切にお願いして挨拶に代えさせていただきます。」
JRO大河原 毅 理事長
来賓挨拶 農林水産省 農林水産省食料産業局食文化・市場開拓課 新藤 光明 外食産業室長
「平成29年の農林水産物及び食品の輸出額は8000億円を超えました。平成31年の輸出額目標1兆円に向けて、政府としても全力投入しております。一方で国内に目を向けると、平成29年の訪日外国人の数は対前年比19%増で2869万人。旅行消費額も対前年比は17.8%増え、主な訪日理由に日本食を味わうことが挙げられていることからも、日本で食べた物と同じような物を自国でも食べたいというニーズは今後も益々増えていく傾向にあると思わます。そのような中で海外における日本食レストランの数は2年前の調査より約3割増え、約12万店とされておりますが、これらのレストランにおいて日本的な調理方法や日本産食材を浸透させていくことが今後もさらに重要になってくることと思わます。
JROにおいては、「海外における日本料理の調理技能認定制度」及び、「日本産食材サポーター店制度」において運用管理団体として、日本食材の海外需要拡大や日本料理に関する適切な技能・知識を習得した外国人料理人の育成を通じて、日本食・食文化の普及と日本の農林水産物・食品の需要拡大にご尽力をいただき、インバウンドとアウトバウンドの好循環を太くしていく取り組みを推し進めていただきたい。」
農林水産省 新藤 光明 外食産業室長
1)組織・企画委員会(田村 清敏 事務局長)
国内外でのシンポジウム及びセミナー、マッチング商談会等を開催しているが、これらの事業を通じてJRO加入のメリットをPRするなど、組織拡大拡充に向けた取り組み引き続き促進して参ります。また、調査事業においては、(一社)日本フードサービス協会の会員を対象とした国内企業における海外の日本食レストラン数・アンケート等を調査しておりますが、このような統計データにおいても定期的な調査・整理を行います。アンケート調査においては海外出店時の人材に関する課題が多く寄せられている傾向にあり、JROとしてもこのような課題解決に向けて、関係団体、国内生産者団体、食品製造メーカー、厨房機器関連業界も含めて、一体となった活動を展開して参ります。JROには25の支部ネットワークがあるが各地域事情にあった事業、情報発信を出来る仕組みを構築・検討していきます。
2)海外市場開拓委員会(中野 勘治 委員長)
本委員会では、日本の食材・食品の海外市場開拓等を行うために、海外の日本食レストランで需要のある日本食材・食品の輸出促進を図るための情報交換や、需要と供給のマッチングの開催を行っております。平成28年度から開始した日本産食材サポーター店制度は、日本産農林水産物・食品の海外需要を拡大し輸出促進を図るため、日本産食材を積極的に使用する海外の飲食店等を、民間団体等が自主的に日本産食材サポーター店として認定できるように取り組むもので、JROは、運用管理団体として活動をしており、これまで60店舗の認定店を登録しております。また、マニラ国際シンポジウムでは、アセアンの中でも、今後最も成長が見込めフィリピン、当日は、日本食を中心としたフードサービス産業・食品産業の市場拡大のための戦略、人材教育、商品開発等をテーマとして、パネルディカッションを開催。パネラーの皆様からは、それぞれの体験に基づき,日本食及び外食産業が成長できるポイント等についてお話いただき、今後同国への海外進出において有益な情報を得ることが出来ました。今年度においては、日本食市場拡大に向けた海外外食事業者向けマッチング、国際シンポジウム、輸出促進・海外展開のための国内セミナーの開催を予定しております。日本食レストランや外食産業の海外展開のためには、食品製造業や食品流通業、厨房機器産業、更には国内生産者団体等のフードサービス関連産業の連携強化が欠かせません。今年度においても、海外展開のためのヒントを会員の皆様に提供していくことに努めて参ります。
中野 勘治 委員長(海外市場開拓委員会)
3)情報・教育委員会(服部 幸應 委員長)
本委員会では、日本料理の調理技能認定制度を普及させていくため、国内の調利子学校及び上海、ニューヨーク、パリなどの各地域で講習会・PR事業を計9回開催しました。特に、海外の講習会では、調理技術の習得はもとより、現場での基礎的な衛生管理講習をカリキュラム盛り込むなど、日本料理講座の充実に努めました。これらの活動により、調理技能認定制度では、平成28年開始時からカウントして、シルバーとブロンズ併せて合計147名の認定者を登録するに至りました。今年度におきましても、海外における日本料理の技能認定制度の認定機関の運用管理団体として活動を進めて参ります。海外の日本食人気は根強いもので、日本産食材の関心も高く、様々な国籍の方が日本料理に携わっておりますが、衛生管理教育についてはまだまだ不十分な点もありますので、その点も強化して取り組みを進めて参ります。広報PR活動につきましては、日本国内の各地域のシェフ、レストランオーナー等と連携を図り、国内の農林漁業者や外食事業者、食品事業者等の取り組みや魅力を発信できるように、ホームページやSNS等を積極的に活用するための検討を進めて参ります。
服部 幸應 委員長(情報・教育委員会)
株式会社トリドールホールディングス 代表取締役社長 粟田 貴也 氏(JRO理事)
1.飲食業を一生の仕事に -すべては小さな焼鳥屋から
私は大学夜間部に在学していたため、昼間は時間に余裕があり、喫茶店のアルバイトをしていた。そのときお客様から「おいしいね。また来るよ」と言われたことにやり甲斐を感じ、「飲食業を一生の仕事としていければ」と思った。喫茶店で働く内に、コーヒーを淹れる、サンドイッチを作るなど技術を身につけた。そして開業資金を調達するため、運送会社で働いた。ここでは高給を貰い、1年で頭金を貯めることができた。運送会社で寮生活をしていた頃、町の赤提灯に惹かれては焼き鳥屋に立ち寄る内に、焼き鳥屋の仕事に興味が沸くようになった。そこで仕事のノウハウを得るためにがんこフードサービス㈱で仕事を教わり、1985年、ついに家内と小さな焼鳥屋を開店することができた。「将来、三店舗を出したい」という目標から屋号を「トリドール三番館」とし、7年後には本当に三店舗を出すことができた。
2.丸亀製麺オープン -「手作り」「できたて」へのこだわり
私の父は香川県出身で、幼少の頃から毎年のように帰省していた。そのうち、瀬戸大橋も開通し、多くの観光客が訪れるようになると、讃岐うどんブームが起きるようになった。香川の小さな製麺所に長蛇の列ができているのを見て、私は衝撃を受けた。今までお客様が何を求めているのかを把握できていなかった、と思った。それは「手作り」、「できたて」、それがすべての答えだった。
そこで、2000年に本場讃岐の製麺所をイメージした店舗を地元・加古川に創った。それが丸亀製麺一号店である。その読みは当たった。当時はセルフうどん店が香川県以外になく、手つかずのマーケットだったのだ。2006年からは出店を加速した。現在では、自社国内約1000店舗の内、およそ800店舗が丸亀製麺である。
3.海外進出のきっかけ、これまでの海外展開について
当初、私は海外出店には全く関心がなかった。しかし、2009年に業界仲間に誘われ、ハワイへ視察に訪れた際、ワイキキをジョギングしていたところ、偶然「For Rent」という看板を見かけた。私は「ここに丸亀を出せば当たるのではないか」と閃いた。早速、仲介業者を紹介していただき2011年4月、出店に漕ぎ着けた。この海外1号店はオープンするやいなや、たちまち大行列が出来た。
このハワイ店での大成功がきっかけとなり、丸亀製麺は積極的に海外展開していくことになる。海外では、限られた情報やリソースで効率的に出店するために、商社や銀行の駐在員から協力を得て、現地の情報を入手している。その後は、上海と北京に準備会社を設立、2012年にはバンコクでパートナーを紹介していただいた。2013年はベトナム、英国、2014年はマレーシアなど、3年間で14ヶ国に展開した。
一方、すべてが順調にいったわけではない。アフリカはテリヤキチキン業態でケニア進出を図ったが、うまくいかず撤退。イタリアのミラノでは、ラーメン店を出したが、苦戦を強いられている。また、マレーシアでの丸亀製麺進出も失敗であった。隣国インドネシアでヒットしているのに何故か集客に苦戦していたため、店を閉める決断をした。しかし、マレーシアでは、タイヌードルの店「ボートヌードル」が流行っており、イスラム教徒の若い女性を中心に人気であった。私は「オーナーに会わせてほしい」と頼み、後に合弁会社を作り、現在はこの業態を現地にて展開している。また、2014年にはハワイでシーフードレストランを出したものの、全く利益を出すことができず大失敗。これは現地の人手不足を背景にシェフの人件費が急騰していたことが原因であった。そこで現地事情を良く知る知人に相談したところ、「米本土では、シーフードを茹でて提供するだけのケイジャンスタイルが流行っている。」と聞いた。そこで、シェフを必要としないケイジャンスタイルに業態転換したところたちまちヒットした。マレーシア、ハワイにおいても、これらの失敗がなければ、この成功はなかったかも知れない。2017年には香港で、雲南ヌードルのチェーン店をグループ化した。やはり弊社は、うどん店を主力業態として展開してきただけに麺業態には親和性があると感じている。世界に出ると、至る所にチャイナタウンがあり、中華圏の人の影響力を痛感している。その意味では雲南ヌードルはこれからの海外展開の一翼になればと思い、多額の資金が必要となったが社運を掛けて決断した。
4.全世界6000店舗の目標に向けて -志が変われば行動が変わり、行動が変われば結果が変わる
1950年当時、世界の人口は25億人に過ぎず、うち十分な消費活動が可能な層は13%に過ぎなかった。 しかし2025年には80億人となり、そしてその半分が外食できるほどの経済力を持つようになる見込みだ。今は欧米が先進国とされているが、かつて産業革命以前はアジアが世界の中心だった。いったんはそれが英国、米国へと遷ったが、今は再び人口増加や経済成長の著しいアジアへと回帰しつつあるように見える。弊社は、2025年度に全世界で6000店舗の展開を目標に掲げている。容易ではないが、諦めずにやっていきたい。因みに現在のグループの店舗数は、国内1,033店舗、海外539店舗、合計1,572店舗である。(※講演当日現在)私は「志が変われば行動が変わり、行動が変われば結果が変わる」ということを、身を以て経験してきた。今後も社員一丸となり前進し、成長していきたい。
株式会社トリドールホールディングス 代表取締役社長 粟田 貴也 氏(JRO理事)
総会記念懇親会では、約180名の業界関係者にご参加いただき、大変な賑わいを見せました。
また、懇親会場では24社の食品メーカー等より商品の協賛を受け、商品を展示する他、提供メニューに取り入れて実際に味わっていただくなど、各社商品をPRしていただきました。
ご協賛企業は以下の通り
秋田県農業試験場 | JA全農(全国農業協同組合連合会) |
株式会社大潟村あきたこまち生産者協会 | 全国農協食品株式会社 |
株式会社餃子計画 | JA全農インターナショナル株式会社 |
味の素株式会社 | チョーヤ梅酒株式会社 |
株式会社イクタツ | 東京デリカフーズ株式会社 |
株式会社伊藤園 | 日本水産株式会社 |
オタフクソース株式会社 | ハウス食品グループ本社株式会社 |
キッコーマン株式会社 | 株式会社花の舞酒造 |
キユーピー株式会社 | 株式会社宝幸 |
株式会社新丸正 | 株式会社マル井 |
住商フーズ株式会社 | マルコメ株式会社 |
大栄フーズ株式会社 | ヤマサ醤油株式会社 |
平成30年度通常総会記念懇親会
たくさんの方々のご来場・ご協賛いただき誠にありがとうございました。心より御礼申し上げます。